バッハの無伴奏バイオリンのソナタとパルティータ全6曲の自筆譜の表紙には「第1巻」と記されています。

ということは、第2巻があるのでしょうか?

また、第3巻、第4巻と続きがあるのでしょうか?

このことには現在誰も答えることができません。

考えられることは3つ。

  • 第2巻は書かれた、あるいは書かれる途中であったが、消失した
  • 第2巻は存在し、単にまだ発見されていないだけ
  • 第2巻はいずれ作曲するつもりだったが、手を付けずに終わった

もっとも、現存する無伴奏バイオリンのソナタとパルティータ全6曲の作曲意図でさえもわかっていないので、何とも致し方がないところです。

結論です。

バッハの無伴奏バイオリンの第2巻は存在するのか?

わかりません。(すみませんです)

第2巻に関する誤解

無伴奏チェロ組曲が第2巻だと誤解されてしまうことがあります。

驚いたことにWikipediaには断言がなされています。

バッハ自身の自筆譜による原版はベルリンのプロイセン文化財国立図書館の音楽部門に所蔵されている。そのタイトル・ページには「無伴奏ヴァイオリンのための6曲の独奏曲、第1巻、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作、1720年」と記されている。「第1巻」とあるが、「第2巻」というのは「無伴奏チェロ組曲」のことである。

無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ – Wikipedia

しかし、これには何ら根拠がありません。

無伴奏チェロ組曲には自筆譜が残されておらず、アンナ・マクダレーナの写譜しかありません。

もちろん、第2巻だと思わせるような記載もありません。

もし無伴奏チェロ組曲が第2巻であれば、アンナがそれについて何も記さないとは考え難いです。

ちなみに、以下の画像がアンナの写譜表紙です。

今となっては、最初に誰が無伴奏チェロ組曲が第2巻だと言い始めたのか不明です。

想像するに、バッハによる作曲で、弦楽器の無伴奏で、6曲で構成されてる、という共通部分から勘違い(捏造)してしまった...というところでしょうか。

補足

少し補足しておきます。

バッハの無伴奏バイオリンのソナタとパルティータ全6曲は3曲の教会ソナタ形式、3曲のパルティータにより構成されています。

  • ソナタ第1番ト短調 BWV1001
  • パルティータ第1番ロ短調 BWV1002
  • ソナタ第2番イ短調 BWV1003
  • パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
  • ソナタ第3番ハ長調 BWV1005
  • パルティータ第3番ホ長調 BWV1006

ソナタとパルティータが交互に配列されているのは、自筆譜の記載順がそうなっているためです。

CDなどでは、ソナタやパルティータは3曲づつ別にまとめられるケースがあります。

さて、無伴奏チェロ組曲ですが、こちらは6曲とも舞曲集(無伴奏バイオリンのパルティータのようなもの)です。

  • 第1番ト長調 BWV1007
  • 第2番ニ短調 BWV1008
  • 第3番ハ長調 BWV1009
  • 第4番変ホ長調 BWV1010
  • 第5番ハ短調 BWV1011
  • 第6番ニ長調 BWV1012

ただし、この6曲の前半4曲は普通のチェロのための独奏曲なのですが、後半2曲は単純ではありません。

第5番はチェロの高音弦をAより低いGに調弦して弾くようになっています。

第6番は通常のチェロではなく、E弦を追加した5弦のチェロのための曲です。

通常のチェロを使って第6番を演奏しようと思えば、ハイポジションを駆使して演奏しなければなりません。

このことからバッハが無伴奏チェロ組曲を作曲するにあたり、かなり明確な目的・意図があったことが伺われます。

バッハ研究者の多くは、ケーテン宮廷楽団のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者(チェロも兼業)だったアーベルのために書かれたと考えています。

ちなみに無伴奏チェロ組曲の最初の曲である第1番の前奏曲は有名なので、お聴きになったことがある方は多いと思います。

しかし第1番の残り含め、他の5曲は何と言ってよいのか、余程のチェロ好きでもなければ聴き通すのに忍耐が必要です。

チェロの練習曲だと考えられたのも無理はないような気がします。(ごめんなさい)

さらに余談ですが、

バイオリンにも5弦のものがあり、現在でも製作されて、一般に販売されています。

5弦バイオリンの方は高弦ではなく低弦が追加されており、バイオリンでありながらビオラのパートもカバーできるものです。

指揮者の中には持ち歩いている人もいて、オーケストラのリハーサルで指示する際に弾いてみせたりします。

第1バイオリン、第2バイオリン、ビオラの3つのパートに対し「こう弾いてくれ」と、見本を示すのに都合よく使えるのです。

閑話休題

話がそれてしまいました。

バッハの無伴奏チェロ組曲は「バッハによる作曲で、弦楽器の無伴奏で、6曲で構成されてる、という共通部分がある」と書きました。

しかし、その共通部分というのは上辺だけのものであって、中身の音楽は全くの別物です。

つまり無伴奏チェロ組曲が第2巻というのは誤解です。