バロック弓、バッハ弓を使用して、3重和音、4重和音を同時に鳴らす奏法です。

バイオリンは4本の弦があり、それを押さえる人間の指も4本ですから、4重和音が弾けそうな気がします。

しかし実際は弓が接触できるのは同時に2本までです。

弓の構造
Hair : 弓毛
Frog : 毛止箱、フロッグ
Stick : 竿、弓身
Screw : ねじ(弓毛の張りを調節する)

無理やり弓を弦に押し付けて3本同時にということも出来はしますが、音が劣化します。

と言いますか、その音では音楽にはならないです。

では、3重和音、4重和音をバイオリンで弾くことはできないのか?

そこで考えられたのがバッハ弓です。

バッハ弓

バイオリン本体がより大きな音を出せるように進化していく中で、弓も進化していきました。

弓の反りも、バロック時代の弓とは逆に反るようになり、より強い張力で毛を張ることができるようになりました。

ちなみに私の弓の例ですが、一番上はカーボン弓です。一番下がバロック弓と言われるものです。

弓は外見が似ているようで、重さも、しなり具合(弾力)も、重心の位置も、それぞれが微妙に異なり弓の個性になっています。

バイオリン演奏者は、バイオリン本体に合わせ、弾く曲に合わせ、弓を選んで使います。

通常の弓とバロック弓で演奏時の状態です

バロック弓と言う定義は明確には無いのですが、バロック時代に使われていた弓を総称しています。

このバロック弓で、毛を緩くはれば、バイオリンの弦の3本や4本に同時に触れることが可能になります。

バッハの時代には、そうした弓を使用することで3重和音、4重和音を演奏していたのではないか、という想像(アイデア)です。

そして強い湾曲の弓が作られ、それをバッハ弓と呼ぶようになりました。

形状からすると薄細長い半円です。(下のCDジャケットの写真をご覧ください)

他にも、取っ手部分に機構(ギミック)を入れて、レバー操作で毛の張力をピンと張ったり、だらんとさせたりできる弓も作られました。

そのレバーは弓の根元にあり、弓を持つ親指で容易に操作できるものです。

単旋律を演奏する時には弓の毛をピンと張り、3重和音、4重和音を演奏する時にはだらんと、演奏しながら一瞬で変化させることができる弓です。

バッハ弓による演奏

たとえバッハ弓があっても、うまく演奏できるものか疑問に思えますが、世の中には器用な人がいるものです。

見事にバッハ弓を使いこなして無伴奏バイオリンのソナタとパルティータ全6曲を弾いています。

ここではCDで聴くことのできるルドルフ・ゲーラーとスピヴァコフスキーの演奏をご紹介します。

ルドルフ・ゲーラーの演奏

こちらのCDは現在廃盤扱いで、市場では在庫品のみ流通しているようです。

テクニック的にも見事で、単なる「イロモノ」に終わらない立派な演奏です。

ソナタ第1番のアダージョの冒頭の4重和音から、きちんと楽譜通りに鳴り響きます。

まるでバイオリンの音を奏でるパイプオルガンの演奏を聴いているようです。

そして、やはり極めつけはシャコンヌ!

バッハ弓は邪道だという意見は意見として、「バッハ弓もありだなぁ」と思わせるほど説得力のある演奏となっています。

まさに必聴です。

トッシー・スピヴァコフスキーの演奏

こちらはスピヴァコフスキーの演奏集でCD4枚組です。

ここにバッハ弓を使って演奏されたシャコンヌが収録されています。

ちなみに他の収録曲は、通常の弓が使用されています。

商品説明すべて世界初出!
20世紀最高のヴァイオリニストの一人と讃えられるスピヴァコフスキー、
圧倒的に貴重な協奏曲録音の数々が一挙大放出!
そして驚愕の「バッハ弓」によるシャコンヌも収録!

DOREMI レーベルの「レジェンダリー・トレジャーズ」シリーズより、驚きの重量級アルバムが登場。知る人ぞ知るヴァイオリニスト、スピヴァコフスキーの世界初出音源集4枚組! ニューヨーク・フィルとの共演を中心とした8つのヴァイオリン協奏曲と、バッハの『シャコンヌ』を収録しています。
 『シャコンヌ』は何と、いわゆるバッハ弓、湾曲弓(VEGA BACH Bow)を使用しています! 古楽復興の波に乗り4つの弦を一気に押さえられるよう考案されたこの弓は史実とは異なるとされ今では誰も顧みなくなりましたが、スピヴァコフスキーが使用してしかも録音していたとはまさに驚きです。彼にとってバッハは子供の頃から特別な存在であったそうで、当時格別の思いを込めてこの弓で演奏したであろうことは想像に難くありません。

販売元情報による商品説明から

収録曲は以下となります。

バッハの無伴奏バイオリンのソナタとパルティータ全6曲からはシャコンヌのみです。

  1. J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調 BWV.1004よりシャコンヌ(バッハ弓による演奏)
  2. ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.61
  3. ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.77
  4. メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調 Op.64
  5. バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第2番 Sz.112
  6. プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番ト短調 Op.63
  7. フランク・マルタン:ヴァイオリン協奏曲
  8. チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.35
  9. ウィリアム・シューマン:ヴァイオリン協奏曲